黒柴りゅうの散歩道

日本各地の旅の記録(重伝建と一宮そして100名城)

24 続・読書のこと-新書

 このブログを読んでもらっている先輩から、「No.23 閑話休題-読書のこと」について「旅や歴史ばかり読んだあとの、ちょっとしたデザートのような感じ」と嬉しいメールをもらったので、もう少し読書のことを続けます。今回はここ1年で読んで印象に残る新書から・・・・

1 ヒトの壁(養老 孟司)
 生物学を研究している教授とお付き合いがあって、ある時「テーブルの上にコップがあって、私から見ると取っ手は左に付いていますが、そちらから見ると右に付いていますね。科学的と思っている知識にも、この様なことは結構あるので、まして社会や人間の営みは・・・・」、と言われ、大切なことは知識以上に見方考え方だと気づかされました。
 養老先生の本はまさにそんな中身です。知らないことが分かる喜びと、知っていると思っていた事が分からなくなる愉しさ、この本には猫のまると共にそんな魅力が詰まっていて、奥の深い人間論・日本人論だと感じます。

2 サラ金の歴史(小島 庸平)
 本屋で手に取った第一印象が「めちゃくちゃ面白い予感がする」で、そんな本は大体がベストセラーになるのですが、予想通り2022新書大賞に選ばれました。買った時の帯に「もう一つの日本経済史」とあるように、学術的にも内容が濃くサントリー学芸賞を受賞しています。
 高度成長に合わせて成長し、社会人になって「Japan as No.1」と「バブルの崩壊」を経験した世代として現代史を振り返る時、サラ金は時代を見る象徴になる物の一つだと思っていたので、新書にしては分厚いものの最後まで集中して読み終えました。テレビで盛んに放映されたダンスや、街角の「お自動さん」がこの間のことのようで懐かしく感じます。

3 上杉鷹山 「富国安民」の政治 (小関悠一郎)
 4月の東北の旅の際、大きな影響を受けました。イザベラ・バードの『日本奥地紀行』が米沢藩領を理想郷として紹介している一文から始まる本書から、この地の持つ多様で豊かな歴史の魅力を知り、伝建地区も一宮も100名城もありませんが絶対に寄りたい場所でした。
 歳と共に今日の社会を築き上げた先人達への敬意が深くなり、上杉神社の鷹山公之像では思わず頭を下げました。本書はそんな心情に適切な輪郭を与えてくれたような感じです。

4 幕末社会 (須田 努)
 東北旅行の間中、この本を手にしていたのですが、帰路の仙台からのフェリーの中で読み終えました。「夜明けを知らずとも、人々は懸命に生きた」とある帯の言葉が、この本に書かれた時代の雰囲気を、端的に表しています。今の私達は答えを知っていますが、その時を生きる人々は予定調和のように明治維新を迎えた訳では無かったんだと、改めて考えさせられました。
 庄内藩における三方領地替え反対一揆のことは、初めて知りました。戊辰戦争でこの地域が味わった悲劇と合わせ、東北地方の歴史の凄さに改めて驚きます。紹介してあった藤沢周平の『義民が駆ける』はすぐに買い求め読破しました。 

5 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍(大木 毅)
 少し前の本ですが、今回のロシアによるウクライナ侵略に当たり、いつもこの本の事が頭から離れなかったので載せておきます。帯にあった「戦場ではない、地獄だ」という言葉と、推薦されている呉座勇一氏の「人類史上最悪の戦争に正面から向き合うことが21世紀の平和を築く礎となるだろう」という言葉が頭から離れません。礎が取り戻せる日を強く望みます。

※画像は何れも「版元ドットコム」より