黒柴りゅうの散歩道

日本各地の旅の記録(伝建地区と一宮そして100名城)

61 伝建地区と石積の棚田

1 八女市の二つの伝建地区
 八女福島は江戸時代初期に作られた城下町で、指定地区はその町人居住区に当たり、久留米藩最大級の商家町として発展しました。町並には城下町として計画された歴史が感じられ、多くの伝統的建造物が残っていて落ち着いた雰囲気の町並です。
 黒木地区は、元は黒木氏の拠点で江戸時代に久留米藩の在方町として発展したようです。明治11年の大火後の建築で居蔵造(入母屋・妻入りの二階建、浅瓦葺)を特徴とし、石張りの建物など黒木の伝統的な町並みが見られます。

福岡県八女市にある八女福島の町並。久留米藩内で最大級の在郷の商家町として発展して来た。

同じ八女市黒木(在方町)の町並。特徴的な石張り居蔵造を町中でいくつか見かける。

2 耳納山地を往く
 八女市からうきは市の伝建地区に向かうため、九州山地の北西端(耳納山地)を横切るような形で県道52号線を走ります。谷間の集落を結ぶ道路は良く整備されていました。より便利な交通事情を願って、先人達がたゆまない努力をしてくれたお蔭です(1980年以降少なくとも道路の建設経費は5兆円程度を下回ったことがないので、この40年間で200兆円以上が注ぎ込まれています。凄いです!)。
 自身も育ったのは山合いの小さな村なので、懐かしさを感じながらの運転です。山村は今でこそ不便の代名詞だと思いますが、高度成長以前の我が国では建築用材や電柱材だけでなく、柴や薪・炭など各家庭のエネルギー供給地で、例えれば産油地・発電所のようなものですから、山の幸と共に豊かな場所でした。幼い頃の記憶でも、田畑と同じ様に山には多くの人が入り、切り払われた雑木林は格好の遊び場でもありました。

山間の村で一際目立つ星野製茶社屋(HPより)と周辺の茶畑

3 八女茶の産地と棚田
 古い記憶を振り返りながら、山中にしては立派な星野製茶の社屋を過ぎました。周辺は多くの棚田に囲まれ茶畑が多いようです。そう言えば八女茶って良く聞くなと思い調べると、我が国の生産地ランキングで第6位、中でも星野村周辺は高品質な玉露の生産で評価を受けていました。
 峠を抜けると視界が開け、道端に展望所がありました。こうした何気ない所にあるこの手の施設は、意外にあっと驚く場所であることが多いので、迷わず車を停め立ち寄りました。するとそこには圧巻の光景が広がっていました。「広内・上原地区の棚田の展望台」です。山合いに育っただけに心を揺さぶられました。広がっている景色に感動と言うより、これを造り維持して来た人々の努力に畏怖の念を覚えました。良いルートを選択しました!