黒柴りゅうの散歩道

日本各地の旅の記録(伝建地区と一宮そして100名城)

36 高知城に圧倒される!

1 「天守=城」ではない
 全国の100名城を訪れていますが、もともと熱心なお城ファンと言う訳ではありません。伝建地区を訪ねて遠くまで来たので、ついでに寄っておこうという感じで、変わったのは以前書いているように、山城との出会いがきっかけです。
 一般的に城というと、関西人のイメージは大阪城か姫路城でしょう。「町中の一角が堀に囲まれ、小高い中心部に天守がある」、そしてその天守こそ城、つまり「天守=城」、そういう感じです。
サンドウィッチマン芦田愛菜の博士ちゃん』の「お城博士ちゃん」の回にも、こんなシーンがありました。石垣と堀を見ている博士ちゃんに、伊達ちゃんが「響大(ひびき)くん、お城まだまだだよねえ!」と言うと、すかさず響大くんが「違いますよ。ここもお城なんです!」と答えます。私もずっと伊達ちゃんと同じでした

   【左】山内一豊騎馬像     【中】高知城の追手門(重文)     【右】板垣退助

   石垣の上に聳える高知城天守、最上部まで40m以上ありそうな見る人を威圧する迫力

2 中世の城郭「山城」と近世の「お城」
 それが山城ファンになって変わりました。戦国時代、実際に合戦の舞台だった山城ですが、江戸時代にはその歴史的役割を終え廃墟となっていきます。それでも現地を訪れ詳しく見ると、石垣や堀切・土塁や曲輪などの名残から、400年以上経っていますが往時の姿が甦って来ます。
 私はその「軍事拠点」と「廃墟」というギャップに惹かれます。各地に残る立派な天守は、今の市役所の庁舎のようなもので、実際に戦いがあった訳ではありません(大阪城会津若松城など一部を除く)。歴史のダイナミズムは、より山城に感じていました。
 ところが廃墟(自然の山)となっている山城を歩いている内に、だんだん近世城郭の凄さが分かるようになってきました。山城にある堀切が満々と水をたたえた堀に変わり、土留めの石積みが壮大な石垣に変化している光景に、圧倒されるようになりました。博士ちゃんではないですが、天守以外の魅力が分かるように成長した訳です(笑)。

【左】本丸と二ノ丸をつなぐ詰門(国重文) 【中・右】二ノ丸から見る天守(国重文)高層建築のような迫力

3 高知城の凄さ
 高知城はあまり好きではありませんでした。遠目に見える望楼型天守は上層が小さく、スケール感に欠ける感じだったからです。加えて司馬遼太郎の描く戦国期の土佐は、長曾我部元親の方が圧倒的に魅力的で(小説『夏草の賦』)、山内一豊は徳川方という幸運が働いたに過ぎないと感じていました(小説『功名が辻』)。
 ところが今回、城内に入り天守に登る中で、大きく印象が変わりました。素人目にも、見事な縄張りそして築城で圧倒されました。特に二ノ丸から見る天守は、本丸の隅に築かれていることもあり、下から連続している石垣の圧倒的な高さと合わせ、高層建築のようで壮観です(しかも現存12天守かつ現存御殿は全国で唯一ここだけ!)。
 山内一豊も凄い、坂本龍馬を生んだ土佐藩の原点に感動した旅でした。

【左・中】全国ただ一つそろって残る現存天守・現存御殿(国重文)  【右】藩主御座所上段の間

【左・中】天守から見下ろした詰門と黒鉄門(国重文)  【右】六階廻縁高欄からはりまや橋方向を望む