黒柴りゅうの散歩道

日本各地の旅の記録(伝建地区と一宮そして100名城)

37 南国土佐の小さな城下町

1 四国伝建地区の魅力
 四国の伝建地区は全部で8つなので多くはありませんが、それでも武家町・商家町・在郷町・港町・漁村集落など多種多様で見所が多い地域です。安芸市土居廓中(かちゅう)は田園地帯の中にあり、武家町と在郷町の両方の佇まいを残す落ち着いた町でした。

河原石を赤土で固めた練り塀、一定の高さに揃えられた生垣、自然石の縁石を使った側溝、武家屋敷・野村家

2 田園の中の時計台
 整備されたの駐車場に車を止めると、まず目に付いたのは町外れに一際目立つ「野良時計」です。「何でこんな所にこんな物があるんだろう?」と思って調べると、観光協会の資料に「家ごとに時計のなかった明治の中頃に、土地の旧家で地主であった畠中源馬氏が自分で時計組み立ての技術を身につけ、歯車から分銅まで手づくりで作り上げた時計台」とありびっくりしました。我が国の近代化は、各地方にいた素封家とその技術に支えられたのだと、改めて江戸時代の地方分権的な国の姿に感慨を覚えました。

3 田園の中の城下町
 もう一つの魅力は城下町であること。土居廓中は、戦国期に築かれた安芸城を中心に形成された町並みです。江戸時代の武家屋敷街の特徴がよく分かるだけでなく、規模は小さいですが立派な堀や虎口を残す城跡があるのが魅力で、訪ねるのを楽しみにしていました。城は、山内一豊重臣五島為重を城主としたのが始まりで、一国一城令後は土居廓中が整備され、五藤氏代々の城下として明治まで続いたようです。
 南国土佐で味わう武士の時代の面影は、格別でした。

【左】安芸城の立派な堀・土塁  【中】安芸城の堂々とした虎口  【右】比高30mで登りやすい本丸