黒柴りゅうの散歩道

日本各地の旅の記録(伝建地区と一宮そして100名城)

78 続・朝ドラと伝建地区

1 「カムカムエヴリバディ」の寺内町富田林
 朝ドラと伝建地区について、伝建地区そのものが舞台になっている場合と、ロケの舞台として選ばれる場合と、二通りあります。「半分青い」の岩村は前者ですが、「まんぷく」での東近江や「カムカムエヴリバディ」の富田林は後者になります。
 富田林の「旧杉山家住宅」は、安子(上白石萌音)の嫁ぎ先である雉真家として登場しました。旧杉山家住宅は国指定重要文化財で、地区で最も古く最も大きい屋敷です。

2 「まんぷく」の東近江五個荘金堂
 東近江市が「まんぷく」のロケ地だったと知ったのは最近です。「まんぷく」は全編見ていたし、東近江市五個荘金堂町も訪ねていたのに、不覚でした。
 泉大津に引っ越し着物と食べ物を交換してもらうために、福ちゃん(安藤サクラ)と鈴さん(松坂慶子)が親友を訪ねて街を歩くシーンです。その白壁と水路のあるシーンは今でもよく覚えています。
 場所は、五個荘金堂の近江商人屋敷「外村宇兵衛邸」と「外村繁邸」の横にある水路の通った小道で、着物をもって二人で歩いていた場面は印象深く、松坂慶子のぼやく声が今でも聞こえてきそうです。

3 安土城と錦鯉
 この町には、安土城へ言った帰りに立ち寄りました。「金堂まちなみ保存交流館」でNPOの方と「これまで訪れた伝建地区」の話題で盛り上がったこと、そして錦鯉の泳ぐ堀割が町をめぐっていたことが強く印象に残ります。田園地帯の真ん中にある、珍しいロケーションの伝建地区でした(他では鳥取県の大山町所子)。

 

 

77 我が家の外壁塗装

1 積水ハウスの良さ
 我が家は積水ハウスですが、鉄骨でダインの外壁が地震や火災に強く(阪神淡路大震災で全壊半壊共にゼロ)、見た目も重厚で気に入っています。屋内はメーターモジュールなので、廊下のすれ違い時に身体を傾ける必要が無く、また階段も勾配が緩いので、自然のバリアフリーになっています。インテリアもよくコーディネートされていて、オークを選んだ我が家はカフェの様な感じで、20年経った今も古さを感じさせません。
 ただそのブランド故か建築価格は高く、定期点検などもしっかり行ってくれるものの、メインテナンスに費用が掛かります。中でも一番悩んでいたのが外壁塗装で、高価格に二の足を踏んでいました。

    LDK、畳コーナーの上が吹き抜け    メーターモジュールでの廊下が広く階段は勾配も緩やか

2 外壁塗装は地元企業へ
 ここで奇跡的な出会いが起こります。
 時々チラシの入る社名の気に入っていた地元企業に連絡すると、すぐに社長自らが自宅まで来てくれました(しかも手土産まで!)。しばらく話すと、その人柄・経験・知識に魅力を感じ、しかも元は大手メーカーの下請けと言うことで安心感この上なし(優秀な実績で表彰も!!)、そして決め手は車でした。仕事用黒のキャラバンはよく掃除され足元もアルミホイール、物に対する愛情が感じられ「この社長に任そう!」と決心しました。
 結果は大満足、見積もり自体も非常にリーズナブルでしたが、メーカー仕様ならオプションになるような内容も含まれ、おまけに新しい技術(材料で)で完成度が高く、1年近く経った今も大満足です。

塗り替えを機にツートンにしましたがうまく行きました  床の間の出っ張りも濃く仕上がり良い感じです

 

76 朝ドラと伝建地区

1 岐阜県恵那市
 昨年夏は、コロナ下でもあったので近場の岐阜県に家内と出かけました。もう少し遠方でないと旅行気分が味わえないかなと思いましたが、全くそんな事は無く近くの県でも魅力的な場所はたくさんあります。
 いつもの様に出向いた土地の一宮にお参りし、No.16しまなみ海道二人旅で触れた伊藤豊雄氏の建築「みんなの森 ぎふメディアコスモス」に立ち寄った後、伝統的建造物群保存地区恵那市岩村を訪れました。ここは古くからの商家町ですが、日本100名城岩村城城下でもあるので、以前からかなり来てみたい場所でしたが、幹線道路からは少し離れているので、機会を逃していた町です。

 美濃国一宮・南宮大社垂井町)    みんなの森 ぎふメディアコスモス(中央図書館の複合施設)

2 朝ドラのロケ地 岩村
 朝ドラを続けて視るというのはそんなに多くはないのですが、「半分青い」は伝建地区が舞台だったので嵌まってしまいました(現在のちむどんどんも好きです)。舞台となった岩村町本通りの町並みは歴史や文化が感じられ、その通りの突き当たりの山が岩村城ですから、とても良い感じの町並です。

 物語の中で、主人公(永野芽郁)の祖父仙吉(中村雅俊)が店で五平餅を焼くシーンが出て来ますが、ここの通りにある商店で習ったそうで、記念にその「みはら」に入りました。店主の女性は元気で溌剌とした女性で、中村雅俊さんに教えた時のことを楽しそうに話してくださいました。

中村雅俊ゆかりの店「みはら」と永野芽郁佐藤健の色紙  鈴愛と律が幼い頃遊んだ一色川の飛び石

3 日本三大山城岩村城
 日本五大山城(月山富田城小谷城観音寺城・七尾城・春日山城)と言うのがありますが、そちらは中世の山城で戦のための城です。こちらの日本三大山城(美濃岩村城・大和高取城備中松山城)は近世の城郭で、それぞれの藩政の中心となる場所なので、今の市役所のような建物だといえます。
 もともと岩村城織田氏と武田氏との境にあったため、たびたび戦火に巻き込まれた城ですが、改修して江戸期も使われたため、近世城郭らしい立派な建物がだったと考えられ、地元がCGでその様子を復元されています(下の画像:ほっといわむらだより)。

 

 

 

75 史跡・宇治川太閤堤跡

 国史跡の宇治川太閤堤跡(うじがわたいこうつつみあと)に行って来ました。太閤堤は地名などいくつか残っていますが、発掘され元の様子が確認できたのは初めてだと思います。築造されたのちに埋没し、新たに築かれた堤防の川の範囲から外れていたため、極めて良い状態で残っていました。ラッキーでした。
 伏見城築城をきっかけに大きな治水工事が行われ、宇治川など流れをまとめて伏見城下に引かれましたが、ここはその堤防跡で復元された後よく整備され、素敵な公園になっていました。

 周辺も含めて「お茶と宇治のまち歴史公園」となっていて、一角には立派な建物「お茶と宇治のまち交流館茶づな」が訪問者を迎えてくれ、お茶のミュージアムのような位置づけの施設でした。素敵なカフェ「とにまる茶づな本店」も入っていて、宇治市の新たな魅力の発信地になって行きそうな予感です。

 

 

74 九州の燃料価格

 信州同様、九州も燃料価格は関西に比べると随分高い気がしました。「それでも一番大都市の福岡なら安い方なんだろう!」と思い、博多のホテルの近くで給油しましたが、翌日の佐賀市の方が少し安かったので残念でした。


 福岡がそこそこ高かったので、ひょっとしたら旅行の間に状況が変化して、関西も高くなっているかも知れないなと思いつつ、帰宅後地元のスタンドに向かいました。途中通りかかったGSは137円、さらに私の行きつけのスタンドは、連携のお店で買い物すると割引券をくれて、その上プリペイドカードで入れるので、何と表示の通り120円代です。

 こうなると首都圏はどんな状況か気になる所です。伝建地区訪問で関東に赴いた際(来月を予定)、よく見て来ようと思っています。

p.s. なおNo.74の記事「高速道のトラック」と本記事を差し替えました。公開した後の感触が、運送業界を批判しているような感じが自分の中に残り、どことなく気持ち良くないので(本意ではない!)変更します。

 

 

73 筑後国・肥前国の一宮

1 伝建地区・一宮の密集地帯
 福岡県・佐賀県には伝建地区が集中していて、この2県だけで9地区あるので東北地方全体と同じ数です。なぜそうなのかは不明ですが、全体的に西日本の方が多い中でも、九州の北部は突出しています。そして一宮も、筑前国筥崎宮住吉神社筑後国高良大社肥前国の與止日女(よどひめ)神社・千栗(ちりく)八幡宮で五社と言うことで、慌ただしい日程になったことが納得できます。

               筑後一宮「髙良大社」

2 高台の一宮
 福岡市内の筥崎宮住吉神社については「65 大都市の中の一宮」で既に触れましたので、今回は残りの三社ですが、この内二つ高良大社千栗八幡宮が高台にあり、夏の暑い中どちらも石段が200段近くあるので大変でした。さすがに登り切ると見晴らしが良く、涼しい風が吹いていたりするので、それはそれで格別です。

               肥前一宮「千栗八幡宮

3 高低差のある場所を疲れずに登る工夫
 よく行く山城などは更に高低差があるので、いつも登る際に気をつけているのが、あまり前を見ないことです。疲れがピークになった時に前方にずっと続く道が見えると、「ええっ、まだこんなにあるのかあ!」と精神的に追い詰められるので、足元を見てひたすら「まだまだ、まだまだ」と自分を励ましながら登ります。
 石段も同じです。登る先は最初に一瞥し、大体何段程度か目測し少し多い目に見積もります。そしてひたすら足元を見つめ、100段を一気に上り小休止、次からは30段毎に小休止して息を入れます。多い目に見積もっているので「まだまだ」と油断せずに上り続けると、平坦な場所に出てゴールです。「もう着いたのか!」と嬉しくなります。ぜひ試してみてください。

              筑後一宮「與止日女神社

 

 

72 長崎市伝建地区②南山手

1 グラバースカイロードと長崎市内のパノラマ
 南山手地区は長崎市のもう一つの伝建地区です。長崎港を見下ろす斜面に幕末から明治の住宅や教会などが残っていて、大浦天主堂(国宝)や旧グラバー住宅(重要文化財)などを中心に、長崎観光のシンボル的存在となっている場所です。東山手からは、ほぼ連続した近接地域なので、車は駐車場に入れたまま徒歩で向かいました。
 東山手地区から遠くに見えていた斜面の巨大建造物「グラバースカイロード」で、一気にグラバー園の入口(第2ゲート)に向かいます。初めて乗るワクワク感でたどり着いたそこは、長崎市内のパノラマが一望できる素晴らしい場所でした。

長崎港フェリーターミナルと長崎県庁   ジャイアント・カンチレバークレーン(世界文化遺産)と稲佐山

2 グラバー園で思ったこと
 グラバー園最上部の入口「第2ゲート」のある旧三菱第2ドックハウスに向かいます。明治初期の典型的な洋風建築であるこの建物は、三菱造船より長崎市に寄贈され移築復元されたもののようで、たくさんの修学旅行生も見学に来ていました。
 観光ガイドさん(先生かな?!)の説明を聞いているのはほんの一部、多くの生徒は高台からの見晴らしに夢中といった感じで、周りに配置された池を囲んで楽しそうにお喋りしていました。「無理もないなあ、若い時は歴史には興味がないからなあ!」と自分の高校時代を思い出していました。
 私の高校は2年生の秋に5泊6日で修学旅行があり、九州に来た時の事を思い出しました。バスガイドさんに連れられ、みんなが向かうので付いて回っていただけという記憶で、目の前の子ども達を批判することは出来ません。シニアになると自分の生きてきた時代も歴史の一部ですから、大なり小なりみんな歴史好きになるのですが、少年少女にとって歴史は余所事なので仕方ないことですね。

3 南山手地区観光の魅力
①旧グラバー住宅
 グラバー商会を設立し、坂本龍馬と交流があったトーマス・ブレーク・グラバーが住んでいた我国最古の木造洋風建築です。1961年国の重要文化財に指定されています。
大浦天主堂
 開国にともなって造成された長崎居留地に、在留外国人のために建設されたゴシック調の教会で、現存するものでは国内最古です。戦前から国宝でしたが、原爆による修復が終わった後、現存する最古の教会建築として1953年再度国宝に指定されました。
③周辺の町並み
 グラバー通りの修学旅行生、とても楽しそうにお土産を買っていました。その後車に戻り、旧香港上海銀行長崎支店や町中の路面電車に旅の気分を感じながら、長崎の町を後にしました。

 

 

71 長崎市伝建地区①東山手

1 意外な伝建地区
 市営松ヶ枝町第2駐車場に車を入れました。ここはらせん状に上の階に上がる立体駐車場で、屋根があって車の室温が抑制されるため、夏場には助かります。しかも最初の1時間290円で延長が140円/30分、とても良心的でさすが観光の老舗という感じでした。
 さてオランダ坂に代表される東山手地区が、重要伝統的建造物群保存地区だとは思いもよりませんでした。長崎のような観光地はそんな指定を受けなくても町並みが守られたり、風致地区が指定されたりして来たとばかり思っていましたが、平成の最初の頃に伝建地区に指定されていて意外でした。

2 オランダ通りからオランダ坂
 かつて外国人居留者が住み趣のある洋館が建ち並ぶ坂道、オランダ坂。周辺には多数の歴史的な建築物が建ち並び、異国情緒溢れる長崎の町並を形成しています。
旧長崎英国領事館(国指定重要文化財
 明治41年(1908)に完成。明治後半の洋風建築として貴重であると同時に、当時の外交の一端を示す建物でもあります。

②東山手甲十三番館(国登録有形文化財
 オランダ坂沿いにある洋風住宅、東山手の外国人居留地の代表的な建物です。

東山手十二番館(国指定重要文化財
 明治元年(1868)の建設と推定され、東山手地区では最も古い建物です。プロシア領事館、ロシア領事館、アメリカ領事館などを経て、現在は長崎市の資料館でした。

④東山手洋風住宅群
 明治の中頃、崖面を2段に造成して整備し7棟の洋風住宅群が建てられました。現在、B棟が保存センターとしても活用されています。

 

 

70 有明海沿岸の伝建地区

1 日程とルートの変更
 旅の途中で自宅に戻る必要が生じました。残りの3泊4日を1泊2日へ、何とか福岡・佐賀・長崎は終えておきたかったので、下図(Googleマップより)二つを合体して1日ルートに変更です。宿泊先は長崎なので市内の伝建地区は翌日午前に回し(午後の出発で長崎~関西は厳しいかなと心配しつつ・・・・)、平戸沖の離島的山大島と、大分県日田市以降を省略し、最終こんな日程とルートになりました。
佐賀ホテル→佐賀城(100名城)→與止日女神社肥前一宮)→有田市(重伝建)→嬉野市(重伝建)→鹿島市(重伝建2ヶ所)→祐徳稲荷→雲仙市(重伝建)→長崎ホテル        

        【左3日目】の予定と【右4日目】の予定を合体して1日ルートに変更

2 鹿島市浜宿地区
 肥前浜宿は有明海の河口付近に位置し、江戸時代から酒造りがさかんに行われてきた宿場町です。保存地区は「酒蔵(さかぐら)通り」と「茅葺(かやぶき)の町並み」で、二つの場所で構成されています(それぞれ別の指定)。
 酒蔵通りは、酒・醤油などの醸造業を中心に発展した地域で、600メートルほどの通りには、白壁の建物や酒蔵などが立ち並んでいます。茅葺の町並みは、有明海に近い漁村集落で、伝統的な茅葺屋根の民家が現在も残り、昔ながらの風景が印象的でした。

3 雲仙市の神代小路(こうじろくうじ)
 まちなみ交流館前の駐車場に入れ横道小路を進むと、鈎の手に帆足家(家老)長屋門があり、その後ろに領主鍋島家の建物が見えています。そこから本小路を進むと、生垣や石垣、水路などの美しい町並で、武家屋敷地らしい町並みが続きました。途中で通りが折れ曲がり、上小路へと入って突き当たりが茅葺き屋根永松邸(旧永松家住宅)です。時が止まったかのような「ザ伝建地区」という感じの場所でした。



 

69 九州を代表する巨大社殿

1 祐徳稲荷神社
 佐賀県鹿島市にある祐徳稲荷神社(ゆうとくいなりじんじゃ)は、日本三大稲荷の一つに数えられ、この地で多くの人々に信仰されています。江戸期鹿島藩主鍋島氏による創建ですが、今や年間約300万人の参拝者が訪れ、初詣では全国ベスト20に入る賑わいで、伊勢神宮出雲大社と同程度ですから西日本を代表する神社と言えます。

     駐車場(無料)から神橋越しに見る本殿    日光東照宮の陽明門を模した立派な楼門

   圧倒的な迫力の御本殿。京都清水寺の舞台を彷彿とさせるが立地の関係で迫力は負けていない。

2 タイ映画での出会い
 ここは2014(平成26)年、タイ映画で上位人気を博した映画『タイムライン』の主要ロケ地で、そのため多くのタイ人が観光に訪れています(今はコロナ禍!)。その映画のテレビ放映時に見ていて「これ日本? こんなスケールの大きい神社あったかなあ。ロケ用のセット?(CG)」などと感じ、いつか来てみたい神社でした。そんな訳で一宮ではありませんが旅の目的地にしていました。

  楼門を境内に入ると、楼門と本殿の間近で重なり絶好の構図となる。本殿は屋根裏・天井まで美しい。

舞台上から見た神楽殿。階段を降り振り返ると圧倒的な柱組に感動する。鳥居の向こうは昭和の香り漂う門前街

 

68 情報入手のポイント

1 旅行者に一番必要な情報
「伝建地区巡り」の最大の課題は、現地の核となっている施設に辿り着くこと、そしてポイントとなる建物を見つけること、これに尽きると思います。昭和の時代など比較的早く指定を受けた地区は、多 くが観光化に成功し自然とその様になっていますが、100地域以上に膨れ上がっている現在、全ての地区にそれを求めることは難しい状況です。

2 何より案内マップを
 一番のポイントはマップです。既存の地図ではなくカフェや土産物店の案内図でもなく、歴史的な建物や町並みの雰囲気を、イラストなどでうまく伝えているマップです。塩田津のものはとても参考になります。

塩田津町並み保存会ホームページより

 駐車場に着いて案内所を訪れ、そこで手に入れたい所ですが、実際は駐車場も案内所も結構分かりにくいのが現状です(だからこそマップが必要という矛盾)。ネットで事前に入手できると良いのですが、今度はサイトが分かりません。市のホームページや観光協会のホームページに辿り着けても、マップは見つからないと言うこともよくあります。

3 全国組織の現状
 理想を言えば、文化庁か伝建協のサイトで全国的にこれを一括管理し、そこに行けばすぐに解決するようになっていれば良いのですが・・・・。ところが両者のWebサイト(下の図)を見て貰えれば分かるように、旅行者がほしい情報というより、役所や協会が全体を管理するためのサイトで、「現地の核となっている施設に辿り着く」「ポイントとなる建物を見つける」には十分には応えてくれません。供給者サイドの情報から、消費者サイドの情報に衣替えが必要です。でもどちらの組織も、その様なことを使命にしている団体ではないので、省庁を横断し観光庁文化庁が協力してサイトを立ち上げてほしい所です。(全伝建地区の訪問を完了した暁に、記念に自分で立ち上げますかねえ・・・!?)

文化庁のサイト】 文化庁ホームページより

・全126の伝建地区が、日本列島の北から順に地方別に一覧表示されているので、伝建地区がどこに何ヶ所ぐらいあるか、すぐに捉えられる。
・ただ更に詳しい情報を得ようと地域名をクリックしても、辿り着けるのは「指定の経緯」や「修復の現状」「地域住民の活用の実際」などで、観光情報ではない。

【伝建協のサイト】 全国伝統的建造物群保存地区協議会ホームページより
文化庁と同様、全126の伝建地区が一覧表示されているので、何という伝建地区がどこにあるか、俯瞰的にすぐに捉えられる。
・更に詳しい情報を得ようと地域名をクリックすると、その地区を代表する画像が数枚掲載されていて、町の様子(魅力)はつかみやすい。
・公式ホームページのボタンがあり、一瞬「やったあ!」となるが、リンク先は市役所のホームページなのでがっかりする。
・地図も載っているが、国土地理院のものでは町の様子はつかみにくい。

 

 

67 全てそろった伝建地区

1 佐賀県嬉野市
「塩田津」は、長崎街道だった道路沿いには、白壁の大きな家々が並びます。現在その後を継ぐ国道498号線は、町を迂回するバイパスになっているので、町中は大きな通りの割に交通量が少なく落ち着いた風情となっていました。
 中心となっている建物は、廻船問屋だった「西岡家住宅」で国の重要文化財に指定されています。隣接する国登録有形文化財の杉光陶器店とともに、江戸後期19世紀半ばの建築とされ、歴史の重みを感じる建物です。

町並の中心長崎街道、かつて鉄道が走っていたため旧街道にしては幅は随分広い。車は川向こうのバイパスへ。

国の重要文化財西岡家住宅と隣接する国登録有形文化財の杉光陶器店   塩田津町並み交流集会所

裏手から見た西岡家住宅  蓮池藩が江戸期に造った年貢米貯蔵の「御蔵」  有明海に通じる御蔵浜

2 理想の伝建地区
 私が100以上の伝建地区を訪れ、今感じている伝建地区の町づくりに期待する条件(環境)は以下の通りですが、ここ塩田津はそのほぼすべてを適えていました(駐車場が少し分かりにくかった!)。
①伝建地区の案内所があり、訪問者が気軽に立ち寄れること。
・一休みできるベンチや清潔な手洗い所がある。
・係の方がいて様々な資料が置かれている。
・案内所の表示がしっかりしていて、訪問者がすぐに見つけられる。
(Googlemapにも表記があればなおありがたい!)
・地元の町づくりに関わる取り組みも紹介されている。
②伝建地区訪問者用の駐車場が用意され、一定の広さがあり無料で駐車できること。
・遠くからの訪問者が見つけやすいよう、町中に進入路が表示されている。
(Googlemapにも表記があればなおありがたい!)
・大きな都市では有料化は仕方ないが、300円/時間を越えない。
③町歩きに持参できるコンパクトで分かりやすい案内マップが作成されていること。
④町に用事のない広域の移動車(特に大型車)は、伝建地区内を通過しないで済むバイパスがあること。
⑤無電柱化が進み、町並の空・建物のそばに電線がないこと。
⑥専用のWebサイトがあり、町の歴史や建物の詳細に関わる説明以上に、以上の内容(案内所・マップ)について分かりやすく掲載されていること。

3 伝建地区のこれから
 ここ塩田津で感じたように、旅行者が訪れやすい要素を整理し、すべての伝建地区に通じるスタンダードとして整理し、各地の整備が進めばありがたいです。その上で各地の情報を一括管理するようなサイトがあれば、伝建地区を整備していく取組と合わせ、一層人々の理解も進んで訪問者も多くなる、そんな好循環が生まれるように感じます。

 

66 無電柱化と伝建地区

1 無電柱化の国際比較
 国際的に見て日本の無電柱化の割合は低く、ロンドンやパリはもちろん、アジアの主要都市でも、香港やシンガポールは100%、台北で96%、ソウルが50%となっているのに対して、東京23区で8%、大阪市で6%ですから(国土交通省2018)、大きな課題であることが分かります。
 日本で電柱が多いのは、よく言われるのは戦後の復興でコストとスピードを重視してきたからというものです。

2 無電柱化のメリット
 町に電柱が多いことのデメリットは大体以下の3点です。
  ①:災害時(台風・地震)の倒壊で道がふさがれる。
  ②:狭い道路における歩行が妨げられる。
  ③:景観を害する。
 ここに来て国土交通省の新「無電柱化推進計画」(令和3年)で、景観形成・観光振興の項目に「重要伝統的建造物群保存地区の無電柱化着手地区数 56 → 67地区」と言う記載を見つけました。今後の展開に期待したい所です。
電柱の地中化を既に終え景観が美しい伝建地区(高梁市吹屋地区・柳井市古市金屋地区・杵築市北台地区

3 磁器の町有田
 佐賀県有田町は、言わずと知れた我が国を代表する磁器生産の町です。有田焼は国内だけでなく、欧州各国に「イマリ」の名で輸出されて来ました。山に囲まれた町並約2kmが保存地区で,道路に面して商家や窯元の屋敷が建ち並び,和風から洋風まで様々な建物が調和する独特な景観を見ることができます。
 画像を見てもらうと分かるように、なるべく電柱や電線を避けた構図で撮影しようとはしたのですが、それにも限度がありご覧のような風景です。実際目にするとこんなには気になりませんが、やはり写真にはしっかり残ってしまいます。
 先に述べた国土交通省の67地区に、ぜひ入ってほしい歴史と伝統の町有田です。

 

65 大都市の中の一宮

1 九州最大の都市福岡
 福岡はさすが九州の中心都市で、町を走っていても大都市だと感じます。昭和の古い記憶では、我が国の政令指定都市は7つ、つまり人口100万人以上の都市ですが、東京・大阪・名古屋・京都・横浜・神戸・北九州で、福岡市は80万人ぐらいだった記憶ですが、その後政令市も増えたし、博多も人口が増えたんだろうと思って調べると、時代は大きく変わっていました。
【2021年10月1日現在(東京都を除く)】
  1 横浜市   3,775,352        6 川崎市   1,540,340
  2 大阪市   2,750,835        7 神戸市   1,517,073
  3 名古屋市  2,325,916        8 京都市   1,453,956
  4 札幌市   1,973,329        9 さいたま市 1,332,196
  5 福岡市   1,619,585      10 広島市   1,196,222
「ええっ!」ていう感じでした。福岡や札幌は100万を越えているんだろうなとは思っていましたが、まさか京都市を大きく越えているとは思いませんでした。札幌などは200万に手が届きそうです。
 筑前国一宮(筥崎宮住吉神社の二つ)は、そんな福岡市の市街地にあり、中でも住吉神社は中州や天神と行った繁華街からそう離れていません。駐車場に入れるのも、一方通行であったりビルの谷間であったり、大都市ならではの立地の中にありました。

中州・高島屋博多リバーレインモール  中州から天神方向を目指す   博多駅と宿泊ホテル

2 筑前国一宮 筥崎宮(はこざきぐう)
 本殿、拝殿ともに国の重要文化財で、戦国時代に荒廃し大内義隆が天文15年(1546年)に再建しています。立派な楼門も国の重文で、小早川隆景により文禄3年(1594年)に建立、加えて石造一之鳥居も重文で、黒田長政により慶長14年(1609年)に建立とのことです。歴史上著名な武将のオンパレードで、変な表現ですがとてもゴージャスな神社です。

【国重要文化財黒田長政建立の石造一之鳥居  小早川隆景建立の楼門  大内義隆再建の本殿・拝殿 

博多湾(お潮井浜)浜之鳥居から、本殿までの長大な参道(約850メートル)が大変印象に残りました。

3 筑前国一宮 住吉神社
 大阪の住吉大社摂津国一宮)・下関の住吉神社長門国一宮)とともに「三大住吉」の一つで、ここも本殿は国の重要文化財です。現在の建物は元和9年(1623年)福岡藩黒田長政の再建によるもので、大都市の中の緑の杜に朱色がよく映えていました。
 ここは専用の駐車場が5時で閉まるため、参拝と朱印を戴いていると閉まってしまう時間帯に訪れたので社務所で相談すると、「表参道に置いてください!」と親切な対応で助かりました。

車を置かせていただいた表参道・西門  国重文の拝殿・本殿  町中で林立するマンションに囲まれている

4 博多の夜
 当然旅行者なら、中州の屋台などへ出向くべきですが、何と言っても私の旅行は弾丸ツアー、当日も関西から遠路運転して到着し、翌日も早朝より発って多くの伝建地区や一宮を訪れることを思うと、早く休みたい気持ちが優先し、結局ホテル近くの博多めん街道(博多駅2F)で、ランキング上位元祖博多だるまで夕食としました。美味しかった!

 

64 私が伝建地区を巡る訳

1 伝建地区を巡る訳
 少し立ち止まって考えてみました。今の所こんな感じでしょうか。
①人との出会いの場合、相手の興味や関心・嗜好や趣味に触れる中で、やがてその人の見方考え方の背景にある来歴や人となりを感じ、自分の人生観や世界観が豊かになって行くように思います。
②町の場合も同じです。町並の姿から背景を調べ、歴史的な経緯を知る中で人々の営みが見え、その場所がその様になったストーリーを感じて、感銘を受けます。
③それ以上に、歴史に育まれた町並は絵画のように美しいので、充実した時間を過ごせます。(筑後吉井のように、電柱の地中化の進んだ町は特にそんな感じです!)
④しかも、ただ古いだけでなく人々が見守り修復を加え、古典を現代に甦らせている姿に感動を覚え、心も豊かになるような気がしています。

2 朝倉市秋月地区
 城下町らしい風情が良く残っている町です。杉の馬場は、桜並木として知られ、春には美しい桜のトンネルとなるため、県内各地からの観光客で賑わいます。

3 うきは市田篭(たごもり)地区
 平川家住宅は、18世紀後期に建てられた農家で、民家としては珍しい国指定重要文化財。古民家注連原(しめばる)は、築150年の古民家を再生した宿泊施設兼文化財